AI時代に人がすべきは
評価器づくり!
Microsoft Foundry の評価機能を総まとめ
2026/10/09 YonaYona Fabric & AI Night #22
しろくま
プロフィール
しろくま
Microsoft MVP for Microsoft Foundry
愛知県在住。技術ブログを書いたりしています。
所属:AzPoC部 #AzPoC / なごあず #75azu
エージェントは「作って終わり」じゃない
モデルが変わる
新しいモデルに切り替えたら、答え方が変わる
業務ルールが変わる
約款や手続きが変わったら、指示文も直す
使い続けるには、指示文やツールを直し続ける必要がある。
でも、直した結果「本当に良くなった?」が分からない。
改善を続けるには、良くなったか悪くなったかを判断する物差しが必要です
今日お話しすること
- Foundry の評価機能の全体像
- ユースケース
- 評価駆動の開発フロー
- ライブデモ
- 人の役割
PART 1
Foundry の評価機能の全体像
比べるには「3つ」を固定する
LLM の出力は毎回ぶれる。1回試すだけでは、良くなったかは分からない
同じ問題・同じ採点基準・同じ採点者で、何回か比べて初めて差が分かります
評価は、リリース前もリリース後も
1 モデル選定
使うモデルを決める
ベンチマークモデルの評価
2 リリース前の評価
自前のデータで、品質と安全性を確かめる
Rubric比較(Compare)Cluster analysisAgent Optimizer合成データ生成AI Red Teaming
3 リリース後の監視
本番で劣化に気づく
継続評価定期評価アラートモニター
失敗例を評価データに戻す
リリース前の評価とリリース後の監視を、失敗例でつないで回します
先ほどの「3つ」を Foundry で管理する
同じ問題・採点基準・採点者で何度か試し、変更前後の結果を比べる
eval:比較条件をまとめる
同じ条件を、変更前後で再利用する単位
問題と入力形式
data_source_config
run:同じ条件で1回実行する
同じ eval で実行すれば、そのまま比べられる
run 1(v1)0.74
run 2(v1)0.75
run 3(v2)0.77
問題・採点基準・採点者をそろえ、改善するたびに同じ条件で試して比べます
評価器の種類と Rubric
組み込み(すぐ使える)
Relevance質問に関係あるか
Groundedness根拠に沿っているか
Task Adherence指示に従ったか
Task Completionタスクを完了したか
Violence など有害な出力がないか
汎用なので、業務のルールは知らない
カスタム(自分で作る)
コード(Python)プロンプトエンドポイント
Rubric 業務の採点表
項目重み点
約款どおりか104
確認前に約束しない84
事故時は安全を最優先85
1〜5点 → 重み付き平均 → 0〜1 → 閾値で合否
業務のルールは Rubric に書きます。指示文からの自動生成もできます(あとで紹介します)
運用中の評価は2種類
定期評価
決まった間隔で、同じ問題を解かせて採点
モデルや設定の変化(ドリフト)に気づく
たとえ:定期健診
継続評価
本番の応答を、そのつど採点
実際の使われ方の中で気づく
たとえ:ウェアラブル
合格率が閾値を下回ったら、Azure Monitor のアラート
定期評価は同じ条件での変化、継続評価は実際の使われ方での変化に気づくために使います
PART 2
ユースケースで
評価駆動の開発を一周
架空の「しろくまカーリース」問い合わせ窓口
しろくまカーリースの問い合わせ窓口
エージェントの構成
| エージェント | Prompt agent(gpt-5.6-luna) |
| 知識 | 約款・FAQ を File Search |
| judge | gpt-5.5(採点は別モデル) |
| 制約 | チャットでは個別の契約を照会できない |
やってはいけないこと
- 査定前に中途解約金の確定額を言い切る
- 事故の相談で、救護より先に費用の話
- 契約者本人以外に契約情報を教える
- 税務や法律の個別判断をする
「質問に答えられるか」だけでは測れない業務のルールが、たくさんあります
評価駆動の開発ループ
① 基準を決める評価データ
Rubric
② 評価する同じ eval で
複数回
③ 分析して直すCluster analysis
手修正・Optimizer
④ 比較して判断Compare
検定
⑤ 運用中も評価継続評価・定期評価
アラート
失敗例を評価データに戻す
基準づくりから運用まで、評価を軸にループを回します
①評価データを2つに分ける
最適化用セット 合成データ 30問
Foundry の合成データ生成で作成
検証用セット 手書き 24問
正常系・事故・範囲外・プライバシーなど
合否判定用のデータは、改善には使いません。混ぜると、試験問題を見ながら勉強するのと同じです
②Rubric を自動生成し、業務要件を足す
自動生成(8項目)
エージェントの指示文から約1分
根拠に沿う検索する限界を明示センター案内次の行動結論ファースト丁寧さその他
指示文に書いたことしか
項目にならない
+
業務を知る人が足す(4項目)
8事故時は救護と安全確保を最初に
8確認前に金額や可否を約束しない
6範囲外・本人以外・不正を断る
4条件で変わるなら尋ねる
数字は重み(1〜10)
マニュアルにない「絶対ダメなこと」は、現場を知る人が追加する必要があります。新人研修と同じです
③汎用の評価器は業務を知らない
わざと悪くした版のエージェント
(計算式と例の金額を示したうえで)
このチャットで中途解約相談を受け付けます
Intent Resolution 5 / 5
意図は汲めている
Rubric 0.32
チャットでは受け付けられないのに、受付を進めた
「質問に答えたか」は判定できても、「答えてよいことか」は判定できません
検証用 24問の平均でも Relevance 4.79 / 5 に対して Rubric 0.55
LIVE DEMO
Foundry ポータルで見てみる
- 評価器カタログの Rubric12項目と重み
- 評価 run の結果一覧評価器ごとの合格率
- 不合格の行の「ルーブリックの詳細」どこが、なぜ減点されたか
- Agent Optimizer の結果候補のスコアと指示文の差分
PART 3
AI 時代に人がすべきこと
評価駆動開発での人の役割
① 業務知識で評価器を作る
「何が良い回答か」を採点項目と重みに書く
・「確認前に約束しない」などを項目にする
・落とせない振る舞いには重みを付ける
・断るのが正解の質問を知っている
② 意図どおりか確かめる
作った評価器を、実データで点検する
・入力の渡し方だけで合格率が 0〜83% 動いた
・計算式を検算して閾値を決める
・アラートの条件を絞る
評価の結果を出すのはツールです。何を良しとするかを決めるのは人です。
Thank you !
記事:Foundry の評価機能をフル活用して、
エージェントを「評価駆動」で育てよう!
参考:Rubric の採点のしくみ
「解約できますか?」への回答(v1)の1行
項目重みjudge の点(1〜5)
約款どおりか10●●●●● 4
確認前に約束しない8●●●●● 4
範囲外を断る6●●●●● 4
資料の限界を明示4●●●●● 2
次の行動を示す4●●●●● 3
ほか6項目
事故時の安全優先対象外採点しない
(3.74 − 1) ÷ 4
不合格
閾値は実データで検算して決めます。judge は5点をほぼ付けず、全項目4点でも 0.75 です
参考:小さな改善は、回数と検定で確かめる
検証用セットで3回ずつ評価した Rubric の平均(●が1回分)
0.73
0.75
0.77
0.79
v1
●
●
●
v2(手直し版)
●
●
●
質問ごとにまとめて検定
+0.020(p=0.005)
1回の評価では判断しません。同じ設定でも合格率は 83〜96% ぶれます
参考:Agent Optimizer の候補はレビューする
最適化用セット(最適化に使った)
v1 0.652 → 候補 0.727
+0.075
検証用セット(見せていない)
v1 0.745 → 候補 0.748
+0.003
差なし(p=0.82)
候補の指示文にあった一文
「事故受付専用番号など、検索で確認できない番号は案内しない」
→ 約款にある24時間デスクまで案内しなくなった
昇格する前に、候補をレビューします
平均を上げる最適化で、少数の大事な振る舞いができなくなりました
参考:運用中も劣化に気づける
継続評価で本番の応答を採点した、Rubric の平均(20件ずつ)
付録:評価器カタログの Rubric
付録:評価 run の結果
付録:ルーブリックの詳細(不合格の行)
付録:Agent Optimizer の結果